相続方法の熟慮期間
2011年6月20日byShigeru Miki
先日、国会において、東日本大震災に関連して、家族を亡くされた被災者の方が相続放棄をするかどうかの判断を行う期間を11月末日までに延長する法案が可決されました。
相続方法の判断期間について、現行の制度ではどうなっているのか確認してみましょう。
民法第915条により「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、相続について単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定されています。
そして、上記の期間(熟慮期間)内に限定承認又は放棄をしなければ、単純承認をしたものとみなされます。(民法第921条)
また、利害関係人等は上記の期間の伸長を家庭裁判所に申し立てることができます。(民法第915条)
「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは通常、相続人が被相続人が亡くなったこと知り、かつ自分が相続人であることを知ったときとなります。
また、相続方法には ①単純承認(被相続人の権利義務を全て承継)②限定承認(プラスの財産を限度にマイナスの財産を負担)③放棄(最初から相続人でなかったことになる) の3つがあり、限定承認と放棄については家庭裁判所において一定の手続を経る必要があります。
熟慮期間内に限定承認又は放棄の手続を行わなければ、単純承認をしたものとみなされますが、ここで注意が必要です。
単純承認は、被相続人の土地や建物、預貯金などのプラスの財産を承継しますが、借入債務などのマイナスの財産も承継することになります。つまり、借入金の返済をも引き継ぐことになり、場合によってはマイナスの財産のほうが多い場合もあり得るということになります。
一度行った限定承認や放棄は原則取消し又は撤回をすることができません。
相続方法の判断をする際には、プラスの財産だけでなく、借入債務等のマイナスの財産にも目を向けて、熟慮期間内に後悔のない判断をしたいものです。