遺産分割協議における『相続放棄』の誤解にご注意
2011年6月27日byShigeru Miki
みなさんは『相続放棄』と聞いてどのような手続が思い浮かびますか?
「そんなの家庭裁判所でする遺産を相続しないようにするための手続のことでしょ」と思っている人にこそ読んで欲しい記事です。
『相続放棄』は、一般的には、家庭裁判所に申述書を提出して行う、遺産を承継しないようにするための手続として認知されていると思います。
一方、遺産を相続しないという内容の遺産分割協議をすることも「相続放棄をする」と表現する人もいます。
法律的な意味や効果について、両者は異なるものですが、相続人自身の資産が増えないという感覚においては似ているのかもしれません。
遺産分割協議における『相続放棄』という言葉の意味について考えてみましょう。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、相続人全員で行わなかった遺産分割協議は原則無効となります。
一方、家庭裁判所において相続放棄の手続をした人については、初めから相続人でなかったものとみなされ、遺産分割協議に参加する必要はありませんし、参加することもできません。
相続人の一人から「相続放棄をする」と聞いたので、家庭裁判所で手続するものと思い込み、その相続人を除いて遺産分割協議を進めていたものの、実は遺産を相続しないという内容の遺産分割協議をするという意味だった。このような場合、遺産分割協議のやり直し等のトラブルになることが考えられます。
一方、上記の例で家庭裁判所において手続をする『相続放棄』を意味する場合には、被相続人と生前に何らかのトラブルがあり、心情的に相続放棄をしたいということも考えられますが、被相続人にその相続人しか知らない借金があるという可能性も考えられます。その際には、他の相続人も家庭裁判所において相続放棄の手続きをすることを検討することも必要になってきます。
もし、遺産分割協議をする際に「相続放棄をする」という相続人がいる場合には、『相続放棄』の意味をしっかり確認してみてください。